前回は、皮膚や髪の健康維持を助けるビオチンについて解説しました。本日は、ギリシャ語で「どこにでもある」という意味の名を持ち、エネルギー代謝やストレスへの対応に深く関わるパントテン酸*Ⅰについて詳しくお話しします。

1.二全てのエネルギー代謝を支える補酵素

パントテン酸は、ビタミンB群の一種で、体内ではコエンザイムA*Ⅱ(CoA)という補酵素の構成成分として働きます。このコエンザイムAは、食事から摂った糖質、脂質、タンパク質の三大栄養素をエネルギーに変える化学反応において、中心的な役割を果たしています。

特に脂質の代謝においては、コレステロールの合成や脂肪酸の分解をスムーズに進めるために不可欠です。私たちの体が活動するためのエネルギーを絶え間なく生み出す、まさに「代謝の要」といえる存在です。

2.ストレス*Ⅲに立ち向かう副腎のサポート

パントテン酸のもう一つの重要な働きは、ストレスに対抗する力を高めることです。私たちは日々、精神的、肉体的な様々な負荷にさらされていますが、パントテン酸は副腎に働きかけて、抗ストレスホルモンである副腎皮質ホルモン*Ⅳの合成をサポートします。

そのため、パントテン酸は「抗ストレスビタミン」とも呼ばれ、ストレスの多い現代生活を支える大切な栄養素となっています。その他にも、免疫力の維持に欠かせない抗体の合成を助けたり、皮膚や粘膜の健康を保ったり、善玉コレステロールを増やしたりするなど、その役割は多岐にわたります。

3. 幅広い食品に含まれる「どこにでもある」ビタミン

「パントテン」という名の通り、このビタミンは動植物性食品を問わず、非常に多くの食材に含まれています。特に鶏レバーや豚レバー、鶏ササミ、卵、納豆、アボカド、キノコ類などが、効率の良い供給源となります。

通常の食事を摂っていれば不足することは稀ですが、熱に弱く、加工や精製によって失われやすい性質があります。また、コーヒーなどのカフェインやアルコールの多量摂取、あるいは極度のストレス環境下では消費量が増大し、不足を招くこともあります。細胞の活力を維持し、ストレスに負けない体を作るために、新鮮な食材をバランスよく取り入れていきましょう。

【用語説明】

*Ⅰ  パントテン酸:水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種。ギリシャ語で「広くどこにでもある」という意味を持つ。

*Ⅱ  コエンザイムA:エネルギー代謝において中心的な役割を果たす補酵素。パントテン酸がその構成成分となる。

*Ⅲ  ストレス:外的刺激によって心身に負荷がかかった状態。パントテン酸はこれに対抗するホルモンの合成を促す。

*Ⅳ  副腎皮質ホルモン:副腎で作られるホルモンの一種。ストレスへの対応、代謝の調節、炎症の抑制などに関わる。

ルネスクリニック日本橋