前回は、造血と神経の健康を守るビタミンB12について解説しました。本日は、タンパク質の合成や細胞の設計図の作成に関わり、特に新しい命を育む時期に欠かせない葉酸*Ⅰについてお話しします。

1.細胞の設計図と発育を支える役割

葉酸は、ビタミンB群の一種で、タンパク質の合成や、細胞の遺伝情報が詰まっている核酸*Ⅱ(DNA*Ⅲ、RNA)の合成において、酵素の働きを助ける補酵素として機能します。
細胞分裂が活発な組織において特に重要な役割を果たしており、体の発育を支える基礎的な栄養素です。また、前回お話ししたビタミンB12とセットで働くことで、血液をつくる造血のプロセスにも不可欠な存在となります。

2.不足が招く貧血と粘膜のトラブル

葉酸が不足すると、赤血球が正常につくられなくなり、巨赤芽球性貧血*Ⅳと呼ばれる貧血を引き起こします。また、一般的に入れ替わりの早い細胞に影響が出やすく、胃粘膜の潰瘍や、舌炎、口内炎といった症状が現れることもあります。
通常の食事をしていれば不足することは稀ですが、野菜をほとんど食べない偏食やアルコールの大量摂取などは欠乏のリスクを高めます。また、アスピリンや経口避妊薬の服用によっても葉酸の利用が妨げられることがあるため、注意が必要です。

3.妊娠初期の重要な役割と先天異常の予防

胎児の正常な発育にとって、葉酸は極めて重要なビタミンです。特に妊娠初期において、胎児の脳や脊髄の元となる部分がうまく形成されない神経管閉鎖障害*Ⅴのリスクを低減することが報告されています。
この予防のためには、食事からの摂取に加えて、吸収効率の良い合成葉酸であるプテロイルモノグルタミン酸*Ⅵをサプリメントなどで補うことが推奨されています。新しい命を健やかに育むために、適切な方法で栄養を補給することは非常に大きな意味を持ちます。

4.鮮度とバランスを意識した摂取

葉酸はレバーや枝豆、ほうれん草、ブロッコリーなどの緑黄色野菜、イチゴなどの果物に豊富に含まれています。熱や光に弱く、調理による損失も大きいため、新鮮なうちに食べる、あるいはスープにして汁ごと頂くといった工夫が有効です。

葉酸が体内で十分に働くためには、ビタミンB12をはじめとする他のビタミンB群やビタミンCとの協力が欠かせません。特定の栄養素に偏ることなく、細胞が必要とする要素をバランスよく整えることで、体の中から真の健康を築き上げていくことができます

【用語説明】

*Ⅰ 葉酸:水溶性ビタミンであるビタミンB群の一種。

*Ⅱ 核酸:細胞の遺伝情報が詰まっている物質の総称。

*Ⅲ DNA:核酸の一種で、生命の設計図となる遺伝情報を保持している。

*Ⅳ 巨赤芽球性貧血:葉酸やビタミンB12の欠乏により、正常な赤血球がつくられなくなる貧血。

*Ⅴ 神経管閉鎖障害:胎児の脳や脊髄の元になる神経管が正常に形成されない先天異常。

*Ⅵ プテロイルモノグルタミン酸:サプリメントなどに利用される合成葉酸の名称。

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