前回は、造血と発育を助ける葉酸について解説しました。本日は、エネルギー代謝をはじめ、体内の様々な化学反応において「縁の下の力持ち」として働くナイアシン*Ⅰについてお話しします。

1.二つの成分の総称:ニコチン酸Ⅱ*とニコチンアミド*Ⅲ

ナイアシンは、ニコチン酸とニコチンアミドという二つの化合物の総称です。ビタミンB群の一種であり、ビタミンB3とも呼ばれます。他のビタミンとは異なり体内でも必須アミノ酸であるトリプトファン*Ⅳから作り出すことができるという特徴があります。摂取したトリプトファンの約60分の1が、体内でナイアシンへと生合成されます。
主な役割は、他のビタミンB群と同様に、糖質、脂質、タンパク質のエネルギー代謝をスムーズにするための補酵素として働くことです。また、脳神経の働きを活性化させ、皮膚を健康に保ち、血液の循環をよくするなど、体の機能を正常に維持するために重要な役割を担っています。

2.不足による症状と過剰摂取への注意

ナイアシンが著しく不足すると、ペラグラ*Ⅴと呼ばれる欠乏症が起こります。皮膚の炎症や下痢といった消化器症状、めまいや情緒不安定といった精神症状が現れるのが特徴です。現代の日本では通常の食事で不足することは稀ですが、慢性的にアルコールを多く飲む人などに発症が認められています。

一方で、サプリメントなどで一度に大量のニコチン酸を摂取すると、血管拡張作用によって皮膚が赤くなったり、ピリピリとしたかゆみが生じたりすることがあります。これはニコチン酸フラッシング*Ⅵと呼ばれます。一度に大量に摂りすぎると、下痢や嘔吐、肝機能障害などの報告もあるため、耐容上限量を守ることが大切です。

3.保存や調理に強く、効率よく摂取できるビタミン

ナイアシンが多く含まれる食品は、カツオやマグロ、タラコなどの魚介類、レバーや肉類、キノコ類、落花生などです。また、体内で合成されるナイアシンの材料となるトリプトファンを多く含むタンパク質をしっかり摂ることも重要です。

ナイアシンは水溶性ビタミンですが、熱や光に強く、酸化しにくいため、保存や調理による損失をあまり気にする必要がありません。そのため、日々の食事から効率よく摂取しやすい栄養素と言えます。細胞レベルの健康を支えるために、日々の栄養バランスを整えていきましょう。

【用語説明】

*Ⅰ ナイアシン:ニコチン酸とニコチンアミドの総称。体内の様々な化学反応を助ける働きを持つ。

*Ⅱ ニコチン酸:ナイアシンを構成する成分の一つ。大量摂取によりフラッシング作用を引き起こすことがある。

*Ⅲ ニコチンアミド:ナイアシンを構成する成分の一つ。ニコチン酸のようなフラッシング作用はない。

*Ⅳ トリプトファン:ナイアシンの原料となる必須アミノ酸。タンパク質に多く含まれる。

*Ⅴ ペラグラ:ナイアシンの欠乏によって起こる疾患。皮膚炎、消化器症状、精神症状が特徴。

*Ⅵ ニコチン酸フラッシング:ニコチン酸の血管拡張作用により、皮膚が赤くなったりかゆみが出たりする現象。

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