世界中で数千万人もの尊い命が奪われた1918年大流行のスペインかぜ。その後、アジアかぜ、香港かぜ、新型インフルエンザと、これまで人類は4回のパンデミックを経験してきました。そして2019年末からの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が5回目のパンデミックとして世界中の人々を恐怖と不安に陥れています。

紀元前から流行していた天然痘、14世紀のヨーロッパで1/4~1/3の人が命を落としたペスト(黒死病)、そして今でも静かな潜行を示す結核、毎年冬場に流行するインフルエンザなど、私たち人類はこうした様々な病原微生物との闘いを強いられてきています。しかし、残念ながら戦いに完全に勝利したのは天然痘ただ一つであり(1980年WHOが根絶宣言)、引き分けから優勢に持ち込むのが精一杯なのです。COVID-19との闘いも人類側が優勢になる、つまり、パンデミックを終息させ、普通の風邪のレベルに落とし込むことが目標になります。

治療薬やワクチンの開発が待たれます。しかしそれをただ座して待つのではなく、自分が感染しない、他の人に移さないために私たちがやるべきことは、三密の回避やマスクの着用(呼吸は鼻で行われるため、鼻を出してはいけない)手洗いといった予防策はもちろんのこと、各自が免疫力を高く維持して感染を予防し重症化を防ぐことです。

免疫細胞が多数常在する腸内の環境を整えること、十分な睡眠の確保、ストレスの回避・解消、適度な運動などは確かに効果的ですが、免疫力を高める栄養成分の確保(食事/サプリメント)が何よりも大切です。

 

感染予防と重症化を防ぐためのビタミン・ミネラルの種類と推奨量

                     (国際分子整合栄養医学会提言 2020)

 

  1. ビタミンD3  2000IU(50μg)/ 日、当初の2週間は5000 IU (125μg)
  2. ビタミンC    3g / 日以上(分服)
  3. Zinc(亜鉛) 20mg / 日   
  4. セレン    100μg / 日
  5. マグネシウム 400mg / 日 

 

どれも大切ですが、とくに1-3が中核になります。しかし、食事からだけではこの量の摂取は困難であることから、質の良いサプリメントを利用せざるを得ないでしょう。

 

ビタミンDは植物由来のD2、動物由来のD3があり、活性型とされるビタミンDは動物由来のD3の代謝型です。コレステロールを原料にして皮膚で紫外線に当たって作られるビタミンDもD3です。その働きは免疫の調整(弱い人は高め、アトピーや花粉症、自己免疫疾患などのアレルギー疾患の人は弱める)のほか、骨を丈夫にしたり、動脈硬化、糖尿病、認知症、精神疾患や肥満、筋力低下の予防など多岐にわたることが分かってきました。こうした多くの作用を有することから注目度の高いビタミンであり、今最も期待したい感染予防効果についても多くの研究報告がなされています。

問題なことに、ビタミンD3が充足している人はわずか2割程度であり、多くの人が十分な免疫の維持ができていないのが実情です。青魚やサーモン、きくらげなどに多く含まれていますが、新型コロナウイルス感染予防強化、重症化予防のためには食事だけでは足りません。たかがビタミンと思わずに、すぐにできる対策として検討したいものです。

 

□サウスイースタン・フィリピン大学の研究

新型コロナウイルス感染患者212例と血清25(OH)D(ビタミンD)レベルを分析したところ、ビタミンDレベルが高いほど軽症であり、重症化が少ないことが分かった(血清ビタミンD濃度と重症化は負の相関あり)。

 

( Mark M.et al. Vitamin D supplementation could possibly improve clinical outcome of patients infected with COVID-19, April 9, 2020 )

□COVID-19感染780例のコーホート研究(インドネシア)

 

感染者の血清25(OH)D(ビタミンD)レベルを正常(>30ng/ml)、不十分(21-29ng/ml)、欠乏(<21ng/ml)に分けて分析したところ、死亡率は正常が4.1%であったのに対し、不十分では87.8%、欠乏では98.9%であった。

 

( Prabowo R. et al. Patterns of COVID-19 Mortality and Vitamine D :

An Indonesian Study. April 26, 2020 )

 

ポリオウイルスに対する高濃度ビタミンC療法の報告以来、数十年にわたりビタミンCの感染予防効果の臨床的なエビデンスが蓄積されてきました。ビタミンCはビタミンDとともに免疫強化の中核をなしています。体内滞留時間が短いことや下痢を起こすことがあるため、多く摂る場合ほど何度かに分けて内服したほうがいいでしょう。

 

Zinc(亜鉛)は免疫力を高める働きのほか、味覚の維持、性機能や抗酸化力、代謝の亢進、皮膚や毛髪の健康の維持、ホルモンバランスの調整などの働きがある最も大切なミネラルの一つです。ビタミンD同様多くの人が欠乏状態にあります。免疫増強による直接効果だけではなく、からだの様々な仕組みを活性化し間接的な効果も加算されるため、ビタミンD、Cに次ぐ栄養成分として考慮されます。

牡蠣をはじめとして、チーズ(とくにパルメザン)、抹茶、ラム肉、納豆などに多く含まれているため、日々の食卓になるべく載せるといいでしょう。

 

自分のからだは自分の力で守る。CD-Z(ビタミンC、D、亜鉛)を軸とする栄養戦略について、これを機会に作戦を立ててみてはいかがでしょうか。

 

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